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Voi che sapete #04



「ロビンは恋愛したことある?」

今夜の見張り番はロビン。
ゾロと一杯やった後、私はなんとなく女部屋に帰る気になれずにしばらくみかん畑にいたんだけど。なんだか話がしたくなって見張り台に上がった。
ロビンはにっこり微笑んで私を毛布の中に招き入れる。

「なぁに、いきなり」
「いいから」
「そんな昔のこと、忘れてしまったわ」
「ズッルイ」
「ふふ、そういう航海士さんはどうなの」
「…私は恋なんてしてないわ」
「ふうん?」

ロビンは見透かしたような顔でコーヒーをすすった。

「航海士さんの意中の相手はどちらなのかしら」
「…は?」
「剣士さんとコックさんとは、そういう仲なんでしょ?」
「…知ってたの」
「気がつかないとでも?」
「まぁ、そうよね」
「で?恋してしまったのね、二人に」
「…ッしてないわよ!!」
「ふふ、顔真っ赤よ?」

一杯どう?とロビンは、ポットからコーヒーを注ぎ私に手渡す。
何よ、大人ぶって。
温かいコーヒーを飲みながら、私は真っ黒な海を眺めた。


最近なんだか調子がおかしい。

なにが、とか言われても困るんだけどね。なんとなく、3人の関係性が、とでも言っておこうかしら。
最初の頃はいわゆる愛だとか恋だとか?そういうもんは置いといて、とりあえず性欲を満たすために組まれた関係だった。

だけど最近は。
その均衡が崩れつつあるように感じる。誰が、とかじゃないのよ。体を合わせるたびにあの二人から枯渇した何かが私の体内に流れ込んでくる、そんな気がする。
それもあるけどまあ後は、愛だとか恋だとか?現にそんなことを考えている私が、いい例だ。

「愛なんかなくても、セックスはできるわ」

もやもやした気持ちを打ち払うように、私は口を開く。
そうよ、愛なんて必要ないわ。今までのように。

「あら、随分とサッパリしているのね」
「…ロビンだってそういう経験あるでしょ」
「まぁ、ないとは言わないけれど」

女一人で海にでるとは、そういうことなのだ。
今更それを思い出したくらいで取り乱すことなんてないけどね。だから私は愛情のあるセックスをしたことがない。
…ロビンはどうなの?

「愛のないセックスなんて割り切るよりも、よっぽど健全だと思うけど」
「恋愛してるって認めることが?」
「ええ」

私は恋なんてしたことがない。
一人だけ恋愛するなんてするべきでないと思っていた。それにそんな状況じゃなかったしね。

愛されるのが怖い。
愛するのが怖い。

私の体の中にある汚れたドロドロしたものや、未だに渦巻く魚人どもからの呪縛の記憶が私の体に心に、ストップをかける。

でも。

ゾロとのセックスはいつも簡素で淡白なものだった。
だけど私に触れてくる手や触れてくる唇があまりに熱くて情熱的で、驚いたのを覚えている。
体全体で私を愛してくれる。

サンジ君とのセックスは私が経験したことがないものだった。
いつも愛の言葉に満たされている。嘘ばかりで都合のいい言葉だと思っていたけどその瞳があまりに熱くて情熱的で、うろたえてしまったのを覚えている。
本気の愛の言葉と目線で私を愛してくれる。


「ナミ、あなたはもう、自由なのよ」
「…え?」

いつの間にか泣いていた。なんでかはよくわからないけど。
私を見つめるロビンの目が大人びていて優しくて、ああそうか、この人は大人ぶっているんじゃなくて、本当に大人なのだ。と、今更に気がつく。

「あなたは自由なの」
「私が、自由?」
「誰かを好きになっても、もういいのよ」
「好きになっても…」

私が、自由?恋をしてもいいの?

「あなた達を見ていると、もどかしくってね」
「…なんでよ?」
「どうして自分の気持ちを押し殺そうとするの?」
「・・・」
「別に何が普通で何が普通じゃないかなんて、個人の自由じゃなくて?」

…この大人の女は、目の前の真っ黒な海のような深い瞳で、私を丸裸にする。
ロビンの前だと私はまるで子供だ。

「…私は二人とも同じくらい、好きなの…」
「でしょうね」
「でもそれはおかしいでしょ?」
「狂っていると?」
「…ええ」

また優しい瞳で、優しく微笑む。

「その気持ちを押し殺す方が、狂っているわ」

ああ…

「愛のないセックスなんて割り切るよりも、よっぽど健全だと思うけど」

ああ…そうね。
有難う、ロビン。

私は自由なのね。
ゾロもサンジ君も、同じだけ好き。同じだけ、愛している。
愛してもいいんだ、愛されてもいいんだ。

そうわかったら猛烈に、あの二人に会いたくなったんだ。



08.12.20

13.07.10
一言
あー、今更ですがこれ、メリー号での話なんですね。ロビンがクルーのこと名前で呼んでないし。
古いなぁ、2008年って、すでに本編ではサニー号だし、ロビンちゃんもみんなのこと名前で呼んでたと思うんですがね、ふふ、精進します…。



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